古市憲寿、太田光による言説の行方→「テロ待望論」を斬る

8月13日付デイリー新潮で取り上げられた、フジテレビ系「めざまし8」における社会学者、古市憲寿氏の発言や 8月7日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS系)における爆笑問題 太田光氏による言説の主眼「旧統一教会問題があまりヒートアップしすぎると山上容疑者の目論見通りになる」という言説が世論に一定の影響を与えていることに鑑み、彼らの主張が「新たなテロの阻止」ではなく「新たなテロを待望する」言説に他ならないことを解明する必要があると考え、ここに試論を展開し、読者の批判を仰ぐこととしたい。

旧統一教会による反社会的行為による犠牲を被ったカルト2世である山上容疑者が、その教団と深い関係にあると思われる安倍元首相(実際、協会の広告塔的役割すら担っていたことが、韓国ソウル蚕室ロッテホテルで開催中の統一教会系UPFによる『Summit 2022 & Leadership Conference』において安倍晋三元首相への追悼献花式が8月12日開催されたことでも裏付けられている)への恨みを募らせていたこと。したがってこの問題は岸田首相が事件発生時に問題の核心と大きく外れたコメントをしたような、「選挙という民主主義の根幹への挑戦」とは異質の問題である。

今回の問題、安倍元首相が山上容疑者の凶弾に倒れた事件には、解明すべき2つの背景がある。
1.旧統一教会がその反社会的行動で信者のみならず、その家族にも甚大な被害を与え家庭崩壊を誘発していたにも拘らず、そうした反社会団体とつながりを持ち、安倍氏のようにその広告塔の役割まで引き受けていた政治家が少なからず存在したという事実があり、カルト2世といわれる被害者家族の中には、この教団のみならずそれに対して社会的承認を与える役割を果たす政治家への恨みが鬱積していた。

2.宗教団体を標榜しながら、霊感商法など反社会的行動を続けている旧統一教会を摘発する公権力によるこの教団への捜査介入が安倍政権下の政治家の圧力を受け阻止され進まなかったという事実がある。そうした政治的圧力は第2次安倍政権下で強まるだけではなく、同じく政治家の圧力で、旧統一教会の名称変更(→世界平和統一家庭連合)が容認される事態さえ起きているのである。

この二つの背景が重なったことが、今回の安倍氏射殺というテロ事件を生んだ要因であり温床でもある。

1.で指摘した反社会的教団と一部政治家の癒着が2.の犯罪組織の法に基づく摘発を抑え妨害してきたという事実は、カルト教団によって家庭を犠牲にされた2世たちの憤りが法による裁きを待つという回路を絶たれてしまったことを意味する。これが公的裁きが期待できない中で彼らに残された手段;私刑人による処罰というテロへの道を切り開いたのである。

したがって、今回のようなテロ事件の再発を防ぐには、事件の背景にある上記温床を絶つことが不可欠である。ところが、古市氏や太田氏の論理、「旧統一教会問題があまりヒートアップするとテロリスト(山上容疑者)の思うつぼになる」という言説は、テロリストのやったテロは悪いことだと主張するだけではなく、テロリストが言うこと(反社会的行為で信者やその家族を苦しめる教団とそれと結びつく政治家が問題)は否定されるべきで耳を傾けるべきではないという帰結に導く。
こうした主張は、テロがなぜ起きたのかという原因解明から目を背け、ひいてはテロが起きる温床を存続させることに加担することになることは明白である。その意味では、彼らは、「テロリストのいうことを聞いているとさらなるテロを生む」と言いながら。テロが起きる温床をこれ以上摘発してはならない(教団と癒着して教団の摘発に圧力をかけた政治家と同様)と声を大にして言っていることになるわけだから、彼らの主張こそが、テロを抑止するのではなく、むしろ新たなテロの勃発を待望するテロ待望論そのものなのだということにならないだろうか。
(文責 M)
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